グラングリーン大阪うめきたクリニックの島田英徳です。
はじめに:再生医療と細胞の「品質」
再生医療は、自分自身の細胞や他人の細胞を用いて、失われた組織や臓器の機能を回復させることを目指す医療分野です。近年、変形性膝関節症や自己免疫疾患、美容領域など、さまざまな分野で研究開発が進み、治療の選択肢として注目される機会が増えてきました。このような再生医療において、治療の根幹をなすのが「細胞」そのものです。そして、その治療の安定性や安全性を考える上で、極めて重要になるのが「細胞の品質管理」という概念です。
この記事では、再生医療で用いられる細胞、特に脂肪由来幹細胞などを例に、その「品質」がどのように評価されるのか、特に「純度」と「機能」という2つの観点から、基本的な考え方を解説します。
細胞の品質は「純度」と「機能」で評価される
再生医療で用いる細胞の品質を評価する際、主に2つの重要な指標があります。それは「純度」と「機能」です。これらは、移植する細胞が目的通りのものであるか、そして期待される能力を持っているかを確認するために不可欠な評価項目です。
- 純度(Purity):採取した細胞集団の中に、目的とする細胞がどれくらいの割合で含まれているかを示す指標。
- 機能(Potency):細胞が持つべき特定の生物学的活性、つまり期待される働きをする能力があるかを示す指標。
これらの品質管理を適切に行うことで、治療結果のばらつきを抑え、より安定した治療の提供を目指すことができます。なぜなら、もし目的外の細胞が多く混入していたり、目的の細胞であっても能力が低かったりすれば、期待される効果が得られにくくなる可能性があるためです。
細胞の「純度」とは?目的の細胞を選ぶプロセス
私たちの体から採取された組織(例えば脂肪組織)には、目的である脂肪由来幹細胞だけでなく、血液細胞や線維芽細胞など、さまざまな種類の細胞が含まれています。再生医療に用いるためには、この中から目的の幹細胞だけを効率よく分離・培養し、その純度を高める必要があります。
細胞の純度を評価するためには、フローサイトメトリーという技術がよく用いられます。これは、細胞表面にある特有の目印(マーカー)を認識する抗体を使って、細胞を一つひとつ識別し、目的の細胞が全体の何パーセントを占めるかを測定する方法です。これにより、製造された細胞製剤が、定められた基準の純度を満たしているかを確認します。
純度が低いと、不要な細胞が混入することで期待される作用が弱まったり、予期せぬ反応を引き起こしたりするリスクも考えられるため、純度の管理は安全性の観点からも重要です。
細胞の「機能」とは?ポテンシーアッセイの重要性
細胞の純度が高くても、その細胞が本来持つべき「機能」を発揮できなければ意味がありません。例えば、幹細胞には組織の修復を助けたり、過剰な免疫反応を抑えたりする能力が期待されます。この「細胞が持つべき治療上の能力」を評価する試験を「ポテンシーアッセイ」と呼びます。
ポテンシーアッセイは、細胞が特定のサイトカイン(情報伝達物質)を分泌する能力や、他の細胞の増殖を助ける能力などを測定することで行われます。細胞は培養環境や凍結保存などの過程で性質が変化することがあるため、最終製品として使用する前に、その機能が維持されているかを確認することは非常に重要です。
この機能評価は、再生医療製品の品質を保証し、ロットごとのばらつきをなくし、安定した治療効果につなげるための鍵となります。
大阪で再生医療を検討する際に確認したいこと
再生医療は、再生医療等安全性確保法のもとで提供される専門的な医療です。治療を検討する際には、その治療がどのような計画に基づいて行われるのか、そしてどのような細胞品質管理体制が整えられているのかを、事前に医療機関に確認することが大切です。
特に、細胞の純度や機能評価(ポテンシーアッセイ)について、どのような基準で管理されているかを尋ねてみるのも一つの方法です。すべての詳細を理解する必要はありませんが、医療機関が品質管理を重視しているかどうかを知る手がかりになります。
大阪・梅田に位置するグラングリーン大阪 うめきたクリニックでは、再生医療に関するご相談も受け付けております。治療の適応は個々の状態によって異なり、すべてのケースで再生医療が第一選択となるわけではありません。まずは医師の診察を通じて、ご自身の状態を正しく把握し、治療の選択肢、期待されること、およびリスクや副作用について十分に説明を受けることが重要です。
まとめ
再生医療の成否を左右する重要な要素の一つが、治療に用いる「細胞の品質」です。その品質は、主に目的の細胞がどれだけ含まれているかを示す「純度」と、細胞が期待される働きをする能力を持つかを示す「機能」によって評価されます。
適切な品質管理が行われることで、治療の安定性や安全性を高めることが期待できます。再生医療を検討される方は、治療内容だけでなく、こうした細胞の品質管理体制についても関心を持ち、納得のいく説明を受けた上で、慎重に判断することが望まれます。どのような治療法にもメリットとデメリット、リスクが存在するため、最終的な判断は専門の医師との相談の上で行うようにしてください。
参考情報
- PMC: Clinical translational research on stem cell products: prospects and challenges. (2026)
- PMC: Suspension culture improves iPSC expansion and pluripotency phenotype. (2023)
- PMC: Principles and Protocols For Post-Cryopreservation Quality Evaluation of Stem Cells in Novel Biomedicine. (2022)
- PMC: Stem cells: past, present, and future. (2019)
- 厚生労働省: 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 / Q&A (2023)
- 厚生労働省: 医療広告規制に関する情報
- 厚生労働省: 再生医療について
監修医師紹介
医療法人島田クリニック理事長
グラングリーン大阪うめきたクリニック診療部長
島田 英徳
2005年徳島大学医学部医学科卒業。初期研修後、米国医師資格(ECFMG certification)を取得し、米国ワシントン大学一般外科にてサブインターンとして研修。京都大学大学院医学研究科博士課程、京都大学iPS細胞研究所研究員を経て、2013年に島田クリニックを開業。グラングリーン大阪うめきたクリニック(https://umekitaclinic.org)では、内科・小児科から細胞治療や美容医療に至るまで、幅広い診療に携わる。
※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的な施術や商品等を推奨しているものではございません。