グラングリーン大阪うめきたクリニックの島田英徳です。
長引く膝の痛み、特に階段の上り下りや歩き始めに感じる痛みは、生活の質に大きく影響します。変形性膝関節症は、こうした痛みの代表的な原因の一つであり、多くの方が悩まれています。従来の治療法に加えて、近年では再生医療という選択肢が注目されており、その中でも「脂肪由来幹細胞治療」が研究されています。この治療法は、単にすり減った軟骨を再生させるだけでなく、関節内で起きている「炎症」を抑える働きが重要であると考えられています。この記事では、脂肪幹細胞治療が持つ「抗炎症作用」という作用機序に焦点を当て、変形性膝関節症の痛みに対してどのようにアプローチするのか、その科学的な背景を解説します。
変形性膝関節症の痛みと「炎症」の関連性
変形性膝関節症の痛みは、単に関節軟骨がすり減ることだけで生じるわけではありません。軟骨が摩耗する過程で生じた微細な破片などが関節内を覆う滑膜を刺激し、慢性的な炎症を引き起こします。この炎症によって、痛みを感じさせる物質(炎症性サイトカインなど)が放出され、痛みが持続したり、関節に水が溜まったりするのです。さらに、この炎症自体が軟骨の破壊をさらに促進するという悪循環に陥ることも指摘されています。つまり、変形性膝関節症の症状を和らげるためには、この関節内の「炎症」をコントロールすることが非常に重要な鍵となります。
脂肪幹細胞治療の主な作用機序「パラクライン効果」
脂肪由来幹細胞治療と聞くと、「幹細胞が直接、軟骨細胞に変化してすり減った部分を補う」というイメージを持たれるかもしれません。もちろん、そのような分化する能力も持っていますが、近年の研究ではそれ以上に重要なメカニズムとして「パラクライン効果」が注目されています。
パラクライン効果とは、投与された幹細胞が、サイトカインや成長因子といった様々な生理活性物質を放出し、周囲の細胞に働きかける現象を指します。変形性膝関節症の関節内に投与された脂肪由来幹細胞は、炎症が起きている環境を感知し、炎症を抑制する働きを持つ物質を放出します。この「抗炎症作用」により、痛みの原因となる過剰な炎症を鎮め、関節内の環境を整えることが期待されるのです。つまり、幹細胞自身が軟骨になるだけでなく、司令塔のように振る舞い、関節内の炎症を抑え、組織の修復を促す環境を作り出す役割を担っていると考えられています。
抗炎症作用がもたらす関節内環境へのアプローチ
脂肪由来幹細胞が放出する物質は、抗炎症作用だけではありません。組織の修復をサポートする成長因子なども含まれています。これらの物質が協調して働くことで、損傷した組織の修復プロセスを助けたり、軟骨のさらなる分解を抑制したりする可能性が研究されています。また、関節内の細胞の活動を調整し、関節全体の恒常性を維持しようとする働きも期待されています。このように、脂肪幹細胞治療は、複数の作用機序が組み合わさることで、単一の薬剤では難しい多角的なアプローチを可能にする可能性を秘めています。
治療を検討する前に理解しておくべきこと
脂肪由来幹細胞治療は、変形性膝関節症に対する新しい選択肢の一つですが、全ての方に適応となるわけではありません。効果の現れ方には個人差があり、期待できる変化や限界について、事前に正しく理解しておくことが重要です。この治療は自由診療であり、公的医療保険の適用外となります。そのため、治療内容、期間、費用、そして考えられるリスクや副作用について、担当する医師から十分な説明を受け、納得した上で判断する必要があります。また、再生医療を提供する際は、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、国への届出や認可がされた計画に沿って行われる必要があります。治療を検討する際は、医療機関が適切な手続きを踏んでいるかどうかも確認すべき点の一つです。
大阪・梅田で変形性膝関節症の相談をするには
大阪駅周辺で変形性膝関節症の痛みにお悩みで、再生医療などの新しい選択肢も視野に入れて相談したいとお考えの場合、専門的な知識を持つ医師への相談が第一歩となります。グラングリーン大阪 うめきたクリニックでは、整形外科の専門医が患者様お一人おひとりの膝の状態を丁寧に診察し、ライフスタイルやご希望を伺いながら、適切な治療方針をご提案します。脂肪由来幹細胞治療が選択肢となりうるかどうかも含め、その作用機序やメリット、注意点について詳しくご説明いたします。大阪駅直結という利便性の高い立地で、お仕事帰りなどにもご相談いただきやすい環境です。長引く膝の痛みについて、まずは一度、診察を受けてみてはいかがでしょうか。
まとめ
脂肪由来幹細胞治療が変形性膝関節症の痛みにアプローチする際、その中心的な役割を担うのは「抗炎症作用」をはじめとするパラクライン効果であると考えられています。幹細胞が放出する多様な物質が、関節内の過剰な炎症を鎮め、組織が修復されやすい環境へと導くことが期待されます。この作用機序を理解することは、ご自身が治療を選択する上で重要な判断材料となります。どのような治療法にも言えることですが、最終的な判断は、専門の医師による正確な診断と、ご自身の状態に合わせた十分な情報提供に基づいて行うことが不可欠です。ご自身の膝の状態を正しく把握し、納得のいく治療法を見つけるために、まずは専門の医療機関にご相談ください。
参考情報
- PubMed: Clinical-grade extracellular vesicles derived from umbilical cord mesenchymal stromal cells: preclinical development and first-in-human intra-articular validation as therapeutics for knee osteoarthritis. (2025)
- PubMed: The Effect of Platelet-Rich Plasma on the Intra-Articular Microenvironment in Knee Osteoarthritis. (2021)
- PubMed: Knee Osteoarthritis: Current Insights Into Pathophysiology and Non-surgical Management Options. (2025)
- PubMed: Culture-expanded mesenchymal stromal cell therapy: does it work in knee osteoarthritis? A pathway to clinical success. (2023)
- PubMed: NMN-primed exosomes derived from infrapatellar fat pad mesenchymal stem cells exert synergistic anti-inflammatory and cartilage-protective effects via MERTK pathway activation in knee osteoarthritis. (2026)
- PMC: Anti-Inflammatory Therapeutic Approaches to Prevent or Delay Post-Traumatic Osteoarthritis (PTOA) of the Knee Joint with a Focus on Sustained Delivery Approaches. (2021)
- PMC: Comparative Effects of Intra-Articular versus Intravenous Mesenchymal Stromal Cells Therapy in a Rat Model of Osteoarthritis by Destabilization of Medial Meniscus. (2023)
- PMC: Intra-articular treatment of knee osteoarthritis: from anti-inflammatories to products of regenerative medicine. (2016)
- PMC: Cartilage tissue engineering: From proinflammatory and anti‑inflammatory cytokines to osteoarthritis treatments (Review). (2022)
- 厚生労働省: 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 / Q&A (2023)
監修医師紹介
医療法人島田クリニック理事長
グラングリーン大阪うめきたクリニック診療部長
島田 英徳
2005年徳島大学医学部医学科卒業。初期研修後、米国医師資格(ECFMG certification)を取得し、米国ワシントン大学一般外科にてサブインターンとして研修。京都大学大学院医学研究科博士課程、京都大学iPS細胞研究所研究員を経て、2013年に島田クリニックを開業。グラングリーン大阪うめきたクリニック(https://umekitaclinic.org)では、内料・小児科から細胞治療や美容医療に至るまで、幅広い診療に携わる。
※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的な施術や商品等を推奨しているものではございません。