グラングリーン大阪うめきたクリニックの島田英徳です。
健康診断で肝機能の数値を指摘されたものの、飲酒の習慣があまりないため、原因がわからず不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。実は、アルコールが原因ではない脂肪肝も存在し、進行すると「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」という状態になることがあります。NASHは、肝臓の線維化を進め、将来的に肝硬変や肝がんへと至る可能性も指摘されています。
このような進行したNASHに対して、従来の生活習慣の改善や薬物療法に加え、近年では「再生医療」というアプローチが研究されています。特に、幹細胞を用いた治療は、肝臓の線維化の進行を抑制する可能性を秘めた選択肢として注目を集めています。この記事では、NASHの基本的な知識から、再生医療、特に幹細胞治療の考え方や現状について解説します。
NASHと肝線維化とは
まず、NASH(ナッシュ)と、それが引き起こす肝線維化について正しく理解することが重要です。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
NASH(Non-alcoholic steatohepatitis)は、アルコールをほとんど、あるいは全く飲まない人に発症する脂肪肝(NAFLD:非アルコール性脂肪性肝疾患)が悪化した状態です。肝臓に脂肪が蓄積するだけでなく、炎症や細胞の損傷が起こります。多くの場合、自覚症状がほとんどないまま進行するため、健康診断の血液検査や腹部超音波検査で偶然発見されるケースが少なくありません。主な原因としては、肥満、2型糖尿病、脂質異常症、高血圧といった生活習慣病との関連が深いとされています。
肝線維化の進行リスク
肝臓の炎症が長期間続くと、傷ついた組織を修復しようとする過程で、コラーゲンなどの線維成分が過剰に蓄積していきます。この状態を「肝線維化」と呼びます。線維化が進行すると、肝臓は次第に硬くなり、本来の機能を果たせなくなっていきます。この最終段階が「肝硬変」です。肝硬変になると、元に戻ることは難しく、肝不全や肝がんを発症するリスクが高まります。そのため、NASHの段階で線維化の進行をいかに抑えるかが、その後の経過を左右する重要なポイントとなります。
NASHに対する再生医療という考え方
NASHの基本的な対応は、食事療法や運動療法による生活習慣の改善です。しかし、すでに線維化が進行してしまったケースでは、それだけでは十分な対応が難しい場合もあります。そこで、新たな選択肢として「再生医療」、特に「幹細胞治療」の研究が進められています。
幹細胞治療は、損傷した組織の修復を促す能力を持つ幹細胞を利用するアプローチです。NASHに対しては、幹細胞そのものが新しい肝細胞に置き換わるというよりも、投与された幹細胞から放出される様々な生理活性物質(サイトカインや成長因子など)が、周囲の細胞に働きかける「パラクライン効果」が期待されています。この働きにより、肝臓の過剰な炎症を抑えたり、線維化の進行に関わる細胞の活動を調整したりすることで、肝臓組織の硬化を抑制する可能性が研究されています。これは、従来の治療法とは異なる作用機序を持つアプローチとして、注目されています。
幹細胞治療に期待されることと現状
NASHに対する幹細胞治療は、まだ研究開発の段階にありますが、主に以下のような点が期待されています。
- 抗炎症作用:肝臓で起きている慢性的な炎症を鎮める働き。
- 抗線維化作用:肝臓が硬くなる線維化のプロセスを抑制する働き。
- 組織修復のサポート:損傷した肝細胞の修復や再生を促す環境を整える働き。
国内外の研究では、様々な種類の幹細胞(脂肪由来、歯髄由来など)を用いた基礎研究や臨床研究が行われており、肝線維化の進行抑制に関する報告も出てきています。しかし、現時点ではまだ標準的な治療法として確立されているわけではありません。どのような患者さんに、どの種類の幹細胞を、どのように使用するのが最も適しているのか、長期的な安全性はどうかなど、今後もさらなるデータの蓄積が必要です。そのため、再生医療はあくまで選択肢の一つであり、その可能性と限界を正しく理解した上で、慎重に検討する必要があります。
受診前に確認しておきたいこと
NASHや再生医療について検討する前に、まずはご自身の体の状態を正確に把握することが何よりも大切です。
健康診断などで肝機能の異常を指摘された場合は、まず内科や消化器内科などの医療機関を受診してください。医師が血液検査や画像検査などを行い、脂肪肝の有無や程度、NASHの可能性、線維化の進行度などを総合的に評価します。
その上で再生医療を検討する際には、以下の点を確認することが重要です。
- 治療の目的と期待されること
- 考えられるリスクや副作用
- 治療の流れと期間、費用
- 治療が「再生医療等安全性確保法」に基づき、適切な計画書を厚生労働省に届け出た上で行われているか
これらの情報を基に、医師と十分に話し合い、納得した上で治療を選択することが求められます。
大阪・梅田でNASHや肝臓の健康について相談するなら
NASHは、生活習慣と密接に関わる疾患であり、継続的な健康管理が重要です。大阪・梅田に位置するグラングリーン大阪 うめきたクリニックでは、内科診療を通じて、健康診断の結果に関するご相談や、NASHの原因となりうる生活習慣病の管理に対応しています。
肝臓の健康状態にご不安のある方や、NASHの進行、あるいは再生医療のような新しい選択肢について関心をお持ちの方は、まずは一度ご相談ください。医師の診察を通じて、ご自身の現在の健康状態を正確に把握し、今後の健康管理や治療の選択肢について一緒に考えていくことが可能です。自己判断で悩まず、専門家である医師の見解を聞くことが、適切な対策への第一歩となります。
まとめ
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、自覚症状がないまま肝線維化を進行させる可能性がある疾患です。基本的な対策は生活習慣の改善ですが、進行した病態に対しては、幹細胞を用いた再生医療が肝線維化の進行を抑制する新たな選択肢として研究されています。
ただし、この治療法はまだ発展途上であり、その効果や安全性についてはさらなる研究が待たれる段階です。肝臓の健康に不安を感じる場合は、まず専門の医療機関で正確な診断を受け、ご自身の状態に合った適切なアドバイスを受けることが重要です。その上で、様々な選択肢について医師とよく相談し、納得のいく方針を決めていきましょう。
参考情報
- PMC: Targeted therapeutics and novel signaling pathways in non-alcohol-associated fatty liver/steatohepatitis (NAFL/NASH). (2022)
- PMC: Conditioned medium from stem cells derived from human exfoliated deciduous teeth ameliorates NASH via the Gut-Liver axis. (2021)
- PMC: Tanshinone IIA regulates the TGF-β1/Smad signaling pathway to ameliorate non-alcoholic steatohepatitis-related fibrosis. (2022)
- PMC: Magnetic-Assisted Treatment of Liver Fibrosis. (2019)
- 厚生労働省: 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 / Q&A (2023)
- 厚生労働省: 医療広告規制に関する情報
- 厚生労働省: 再生医療について
監修医師紹介
医療法人島田クリニック理事長
グラングリーン大阪うめきたクリニック診療部長
島田 英徳
2005年徳島大学医学部医学科卒業。初期研修後、米国医師資格(ECFMG certification)を取得し、米国ワシントン大学一般外科にてサブインターンとして研修。京都大学大学院医学研究科博士課程、京都大学iPS細胞研究所研究員を経て、2013年に島田クリニックを開業。グラングリーン大阪うめきたクリニック(https://umekitaclinic.org)では、内料・小児科から細胞治療や美容医療に至るまで、幅広い診療に携わる。
※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的な施術や商品等を推奨しているものではございません。