グラングリーン大阪うめきたクリニックの島田英徳です。
再生医療は、病気や怪我で損なわれた組織や機能の回復を目指す医療として注目されています。その中心となるのが、人の身体から採取した細胞を培養し、治療に用いるというアプローチです。このプロセスにおいて、治療の前提となるのが「細胞の安全性」です。特に、培養する細胞がウイルスなどに汚染されていないかを確認する品質管理は、極めて重要な工程となります。
この記事では、再生医療で用いる細胞の製造工程における安全性、特にウイルス混入のリスクと、そのリスクを管理するために行われる「ウイルス否定試験」の役割について解説します。治療を検討する上で、どのような安全対策が行われているのかを理解するための一助となれば幸いです。
再生医療における細胞の品質管理の重要性
再生医療に用いられる細胞は、ご自身のもの(自家細胞)であっても、他の方から提供されたもの(他家細胞)であっても、体外で培養・加工されるプロセスを経ることがあります。この製造工程で、意図しない微生物、特にウイルスが混入(コンタミネーション)する可能性はゼロではありません。万が一、ウイルスに汚染された細胞が体内に投与されると、重篤な感染症を引き起こす可能性があります。
そのため、再生医療を提供する医療機関や細胞培養加工施設は、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療等安全性確保法)」に基づき、厳格な品質管理体制を構築することが求められています。細胞の採取から培養、加工、保管、そして最終的な投与に至るまで、すべての段階で汚染のリスクを最小限に抑えるための対策が講じられています。
ウイルス混入の経路とドナースクリーニング
細胞へのウイルス混入には、主に二つの経路が考えられます。
- ドナー(細胞提供者)由来のリスク:細胞の提供者自身が、自覚症状のない潜伏感染を含め、何らかのウイルスに感染している場合。
- 製造工程での汚染リスク:細胞を培養・加工する環境や、使用する試薬、作業者などを介してウイルスが混入する場合。
これらのリスクに対応するため、まず重要になるのが「ドナースクリーニング」です。他家細胞を用いる場合はもちろん、自家細胞の場合でも、細胞を採取する前に提供者の健康状態を問診や血液検査などで詳細に確認します。B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)といった特定のウイルスについて、感染の有無を調べることは、安全な細胞医療の第一歩です。
品質管理の中核「ウイルス否定試験」とは
ドナースクリーニングを通過したとしても、ウイルスの潜伏期間などにより検出できない可能性も考慮しなくてはなりません。そこで、細胞の製造工程で重要な役割を果たすのが「ウイルス否定試験」です。
ウイルス否定試験は、培養・加工された最終的な細胞製品に、治療上問題となるウイルスが含まれていないことを確認するための検査です。一般的には、ウイルスの遺伝子を増幅して検出するPCR法などの高感度な手法が用いられます。この試験によって、ドナー由来のリスクだけでなく、製造工程で万が一発生したかもしれない汚染のリスクも評価することができます。この厳格な試験をクリアした細胞のみが、実際の治療に用いられることになります。
細胞培養施設の厳格な安全管理体制
ウイルスの混入を防ぐためには、試験だけでなく、細胞を扱う環境そのものの管理も不可欠です。再生医療に用いる細胞は、CPC(Cell Processing Center)と呼ばれる高度に清浄度が管理された専用の施設で製造されます。
CPC内は、空気中の塵や微生物が厳しく管理され、作業者は専用のクリーンウェアを着用し、無菌的な操作手順を徹底します。また、使用する器具や試薬も滅菌処理されたものを用いるなど、あらゆる段階でコンタミネーションを防ぐための対策が講じられています。こうした物理的な環境管理と、ウイルス否定試験のような科学的な品質評価が両輪となって、再生医療の安全性を支えています。
大阪で再生医療を検討する際のクリニック選び
再生医療を検討する際には、治療の効果だけでなく、その安全性を支える品質管理体制について、医療機関がどのように取り組んでいるかを確認することが大切です。クリニックを選ぶ際には、以下のような視点を持つとよいでしょう。
- どのような細胞を、どの細胞培養加工施設で製造しているか。
- 法律に基づいた適切な届出や計画が提出されているか。
- カウンセリングの際に、安全性に関する質問に丁寧に答えてくれるか。
- 治療のリスクや副作用についても十分な説明があるか。
大阪・梅田に位置するグラングリーン大阪 うめきたクリニックでは、再生医療を含む細胞治療に関するご相談を受け付けています。治療の選択肢を検討するにあたり、安全性に関するご不安や疑問について、医師が直接お話を伺い、当院の安全管理体制についてもご説明いたします。どのような治療が適しているか、またどのようなリスクが考えられるかは、個々の状態によって異なりますので、まずは専門的な知見を持つ医師にご相談ください。
まとめ
再生医療で用いられる細胞の安全性は、厳格な品質管理体制によって支えられています。ドナーの健康状態を確認するスクリーニングに始まり、高度に管理された環境での細胞培養、そして最終製品にウイルスが含まれていないことを確認する「ウイルス否定試験」まで、多層的な安全対策が講じられています。
治療を検討される際は、こうした背景を理解した上で、提供される医療の安全性について十分に説明を受け、納得してから判断することが重要です。ご自身の身体に関わることだからこそ、信頼できる医療機関で医師とよく相談することをお勧めします。
参考情報
- PMC: Cord Blood Platelet Gel as a Treatment of Occipital Pressure Injuries in Newborns: Report of Two Cases. (2021)
- PMC: Effects of SCCO(2), Gamma Irradiation, and Sodium Dodecyl Sulfate Treatments on the Initial Properties of Tendon Allografts. (2020)
- PMC: Addressing the challenges of immunogenicity, heterogeneity and tumorigenicity in the clinical translation of human embryonic stem cells. (2025)
- PMC: Mesenchymal stromal cell products for intra-articular knee injections for conservative management of osteoarthritis. (2021)
- 厚生労働省: 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 / Q&A (2023)
- 厚生労働省: 医療広告規制に関する情報
- 厚生労働省: 再生医療について
監修医師紹介
医療法人島田クリニック理事長
グラングリーン大阪うめきたクリニック診療部長
島田 英徳
2005年徳島大学医学部医学科卒業。初期研修後、米国医師資格(ECFMG certification)を取得し、米国ワシントン大学一般外科にてサブインターンとして研修。京都大学大学院医学研究科博士課程、京都大学iPS細胞研究所研究員を経て、2013年に島田クリニックを開業。グラングリーン大阪うめきたクリニック(https://umekitaclinic.org)では、内料・小児科から細胞治療や美容医療に至るまで、幅広い診療に携わる。
※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的な施術や商品等を推奨しているものではございません。